こんにちは
大河内です
永久歯の先天性欠如の割合は文献によって3〜10%とばらつきがありました。
古い文献ほどその数値が低い傾向にあったのですが、
日本小児歯科学会が平成19年から20年度にかけて全国規模で実施した調査では
「10.09%」
と報告されました。
これは有名な数値なので皆さんご存知だとは思うのですが、
ここ近年は特に叢生が主訴の患者さんにパノラマを撮影すると、先天性欠如を認めるケースも稀ではなくなってきました。
ただ、私たちに取っては先天性欠如はそんなに珍しいものではないですが、保護者の方やご本人はそうではないですよね。
私自身、過去に先天性欠如を受けた患者さんがまるで重大な病気の告知を受けたようにショックを受けて涙を流された経験があります。
そのことは今でもとっても反省していますので、
その経験も含めて、今では説明の仕方をとても注意深く行っています。
この10%の数値を出して
「クラス(30人)に3人くらいはいるので珍しいことではない」というように身近な例えを出して安心させることと、
「これは人類の遺伝的な問題なのでお母さんやお父さんに原因があるわけでない」とはっきりと保護者に何か非があるわけでないことを告げるようにしています。
それでも
ショックを受けていることには変わりはないので、その先天性欠如が将来的に歯並びにどのような影響を与えて、どのような治療があるかという具体的な話をしていきます。いろいろな治療法の選択肢があることを告げると、皆さんは安心された顔を見せてくれます。
そして最後に、
「〇〇君は人類の進化系なのですよ」「親知らずがある私やお母さん方はもう旧人類なんですよ」という人類の進化の話題を明るくして、
お母さんたちは
「〇〇君、新人類なんだね!」と2人で笑ってくれるところまで安心感を与えることができれば説明が成功したと思っています。
歯が足りない事実は我々が何をしようとも変えることはできません。
ただ、その事実に対して
正しい情報を提示しながら
前向きな気持ちにさせるか、後ろ向きにさせるかは告知する私たちにかかってきます。
「言葉で治療する」という本を、患者さんへの説明で悩んでいる時に読んで、患者さんへの説明のしかた一つでも気を使うようにしています。10年以上前に読んだので内容は忘れたのでオススメできるものであるかどうかはわかりませんが、「言葉で治療する」という言葉だけは今でも私の診療規範の一つにしています。
以下本の紹介より
病にかかったとき、患者さんと家族は医療者の言葉しだいで、治療の日々が天国にも地獄にもなる。「病気になったのは頑固だからだ」「苦しくて、病院には殺されるために来たようなものだ」「弱っちゃったね、また元気になろうね。痛みもきちんと止めてあげますよ」……衝撃の現場を紹介しながら、鎌田医師が心と体が立ち直っていく言葉をしめす、役に立つ新しいコミュニケーション術