こんにちは。
大河内淑子です。
上顎側方拡大装置の付加装置として、前方スプリングがあります。
中切歯の交叉咬合などに用いることが多いのですが、
「側方拡大しながら前方へも拡大されるなんて一石二鳥だわ」
と考えているようでしたら要注意です。
側方拡大時には装置も歯も横方向に移動します。
前方拡大装置は前方にスプリングで力をかけているのですが、
同時に横方向に力が分散されることを考えると、
実際はスプリングの力は歯に対して斜め方向にしか力が加わりません。
このため、力の効果は激減します。
前方に移動しないわけでないのですが、
移動に時間がかかったり、
最悪の場合移動しなかったり、
移動させるための調整が難しかったりします。
この欠点を補うためには、
まず前方スプリングで出したい前歯を前に出し、
その後、側方拡大を開始するという
2段階で行うことが必要です。
実際は1ヶ月に1回の活性化で3〜4回もすれば前歯は前に動きます。
その後、平行拡大を開始すれば確実に装置の効果が出ます。
逆に、前方に移動する量が少ない場合や、
前方に出すスペースがない場合は
拡大しながら前方スプリングの活性化を行う場合もあります。
どのように装置の効果を出したいのかによって
装置の活性化のタイミングが違うので
「何でもかんでも活性化して側方拡大する」のではなく、
治療のイメージを描いてからの使い分けをすることが必要でしょう。
ちなみに、私はこの前方スプリングは好きではありません。
交叉咬合をいち早く解消したい気持ちはあるのですが、
側方拡大していくと、
舌の力で上顎のスペースができると自然に前方に歯が移動してきます。
ほとんどがスペース不足が原因での交叉咬合なので、
このパターンがとても多いのです。
逆に、自然に前方に出ない場合は低位舌などの機能不全を疑います。
また、少しだけ前方に移動したい場合でも
拡大後に閉鎖型の装置でサンドスプリングを調整すると
あっという間に綺麗に前に出ます。
早ければ1ヶ月です。
余分な装置で調整を複雑化させるよりも、
このパターンで治療した方が
金銭的にもチェアタイム的にもロスは少ないです。
全ての症例をこのパターンで治すわけではありませんが、
適応症例が多いため、
試してみることをお勧めいたします。