日常あれこれ

私の咬合誘導との関わり

「なぜここまで床矯正を用いた治療が行われるのか?」

それは私と同じように悩んで悩んだ末に臨床に取り入れた歯科医院の先生が多いからだと考えます。

臨床研修が終わった私は1日100人以上来院する大型歯科医院に勤務し、そこで、院長に「小児担当」と命じられたのを皮切りに、小児歯科への道のりが始まりました。

その地域では今では珍しく齲蝕が多く、小児の齲蝕予防が目下の課題でした。ただ、フッ素塗布と齲蝕予防の啓蒙を行うことと、時代の流れで齲蝕は劇的に減ってきました。

ところが、齲蝕が減ってくると、今度は患者さんから「歯並びが気になる」という相談がひんぱんに寄せられるようになりました。

そのような患者さんを矯正専門医に紹介しても「専門医の先生に治療してもらうまでは考えていない」との理由で9割以上の患者さんは治療を受けず、その当時の私にできることは目の前で咬合が悪化していくのを経過観察していくだけでした。

「これでいいのか?」と思いつつも、患者さんが希望しない治療は行うことができません。

その後も同様のことが起こり、なおかつ何人もの患者さんから

「ずっと虫歯予防で診てもらっていた先生に「歯並び」も診てもらいたい。」

と希望され始め、これからの臨床医は咬合誘導の知識がないとやっていけないと猛反省しました。

それから咬合誘導の勉強を始めました。

周囲の歯科医師の多くが『自費補綴』を経営の一助として勉強する中、「前歯が変な風に生えてきたけど、放置したくない」「でも専門医に行くのは経済的な理由から無理」という患者さんにどうやったら臨床医がアプローチできるのか。本当にそればかりを考えて勉強会に参加し続けました。

そこで出会ったのが床矯正装置と口腔筋機能療法(バイオセラピー)を組み合わせた咬合誘導法でした。

臨床医が患者さんに求められていることはこれだと確信した私は、床矯正治療の第一人者である鈴木設矢先生に師事し、鈴木歯科医院で床装置を使った咬合誘導を勉強してきました。

「普通の街の歯医者さん」という臨床医がどのよう咬合誘導法を行い、どうしてそれが多くの患者さんからの支持をいただいていたのか。そして、他の咬合誘導で成功している医院や今まで自分がやってきた事、とってきた行動をまとめ、赤字部門になりがちだが患者さんのニーズがある小児歯科をどうすれば医院経営へ繋げられるのかを目の当たりにしてきました。

床矯正装置を用いた咬合誘導法は始めるための高額な初期投資は必要ありません。使っている材料も普段の義歯調整で使うようなものばかりです。なおかつ、口腔筋機能療法(バイオセラピー)の手技を応用して近年保険に導入された小児の口腔筋機能不全や高齢者の口腔筋機能低下症にも対応できます。

また、臨床医の強みである「かかりつけ医」として歯が生えた頃から通っていただくことで、早期発見早期治療への機会が増えます。

もちろん、全ての症例を咬合誘導のみで治すことは不可能で、成長過程で遺伝的問題の強い患者さんなどは抜歯矯正や専門医への紹介となることもあります。ただ、小さい頃から見ている患者さんへ機能も含めた初期指導、初期介入行うことで、歯列の悪化の複雑化を防ぐことができます。そして、複雑化を防ぐことで、結果的に治療費用が抑えられることもあり、患者さんの利益へとつながり、かかりつけ医としての地域医療に貢献することが可能です。

また、それらの臨床の中で私が常に意識してきたこと。それが女性の働きかたということでした。

咬合誘導をライフワークにしてきたと言えば聞こえはいいのですが、実は単に『女性だから』という理由です。勤務していた歯科医院からは「女性だから子供ウケが良いでしょうという」理由で小児担当になっていました。

ですから、自ら望んでではなく、小児の患者さんや保護者とスタッフと一緒にコミュニケーションをとってその要望に必死で答えていただけなのです。それを深く突き詰めいていくと、自身も勤務医でありかつ女性で母親だからこそ、保護者の気持ちに共感でき、スタッフの働き方への改善点がよく見えるようになりました。

床矯正装置を用いた咬合誘導は他の治療のように歯科医師主体の治療法ではなく、患者さんとスタッフが主体の治療法です。

勤務していた鈴木歯科医院は20年以上勤めているスタッフが在籍していました。スタッフ主体とする治療を行うことで、スタッフの自主性が養われ、歯科医師と同じ目線で患者さんを診ることでスタッフ自体のレベルも上がり、仕事にやりがいが出てきます。

小児の咬合誘導は単なる治療法だけではなく、スタッフの働きがいをも向上する可能性があり、患者さんの利益と医院とスタッフの利益の双方が実現されるスタイルなのです。

診療の小児歯科部門を強化し、臨床医が小児期から咬合誘導を行うことで「かかりつけ医」として患者さんの「一生健康な歯で食べていただく」という目的へつなげて頂ける事を実践しております。

私が行なっている咬合誘導は床矯正装置だけでなく、その日からできるコストのかからない小児歯科のノウハウもあります。

このブログがぜひ皆様の臨床の一助としていただきたいと考えております。